不貞をされた側には、慰謝料を請求する正当な権利があります。それでも、あえて請求しないという選択が結果的に賢明な場合があります。
「請求できるのだから請求すべき」と一律に考えると、かえって時間と費用と精神的な負担を費やし、得るものが少ないという結果になりかねません。
このページでは、慰謝料請求を見送ったほうがよいケース、それでも請求すべきケース、請求しない場合に取り得る代わりの手段までを整理します。判断は状況によって変わるため、迷う場合は弁護士にご相談ください。
請求しないほうがよい可能性があるケース
次のような状況では、請求のメリットが小さくなることがあります。
相手に支払能力がない
最も現実的な理由です。調停や判決で金額が確定しても、相手に資力がなければ回収は容易ではありません。無職である、多額の借金がある、資産がないという状況では、手続きを尽くしても回収できないことがあります。
その場合、弁護士費用や調査費用を負担したうえで何も得られない、という事態も起こり得ます。相手の資力を見極めることは、判断の出発点になります。
証拠が乏しい
不貞行為を裏づける客観的な材料がない状態では、相手が否認した時点で交渉が止まります。訴訟に進んでも認められない可能性があります。
ただし、これは「今は証拠がない」だけの場合もあります。関係が現在も続いているのであれば、調査によって材料を得られる可能性があります。証拠がないことを理由に諦めるのは、関係がすでに終わっている場合に限られます。
婚姻関係がすでに破綻していた
不貞の時点で長期間別居していた、離婚に向けた協議が進んでいたという場合、保護すべき利益がなかったとして認められない、あるいは大きく減額されることがあります。
争点が多く、得られる額も小さいと見込まれるのであれば、労力に見合わない可能性があります。
時効が完成している
不貞の事実と相手を知った時から3年が経過している場合、相手が時効を主張すれば請求は認められません。詳しくは慰謝料請求の時効をご覧ください。
金額より早期の解決を優先したい
離婚を早く成立させて生活を立て直したい、子どもへの影響を最小限にしたい、という場合です。慰謝料の交渉を持ち込むと、話し合いは長期化します。
相手が離婚に同意している状況で慰謝料を強く求めると、態度が硬化して離婚自体が遠のくこともあります。何を最優先するのかを整理する必要があります。
関係を修復したい
配偶者との関係を続けたい場合、配偶者に請求しても同じ家計から支払われるため実質的な意味は薄くなります。不貞相手にのみ請求するという選択はありますが、その過程で配偶者との関係が悪化することもあります。
相手からの反撃が予想される
こちら側にも婚姻関係の悪化について落ち度がある場合、請求をきっかけに相手から別の主張をされることがあります。争点が広がると解決は遠のきます。
精神的な負担が大きすぎる
見落とされやすい要素です。請求手続きは、不貞の詳細を繰り返し思い出し、書面にし、他人に説明する作業を伴います。数ヶ月から1年以上続くこともあります。
心身の状態が不安定な時期に無理を重ねると、金銭以上の代償を払うことになりかねません。
費用と回収見込みを比べる
判断材料として、費用対効果を具体的に考えてみることをおすすめします。
弁護士に依頼する場合、着手金が10万円から30万円程度、報酬金が経済的利益の10%から20%程度とされることが多くあります。訴訟に進めば総額50万円を超えることもあります。証拠を得るための調査費用がかかる場合は、それも加わります。
一方、回収できる見込み額が数十万円にとどまるのであれば、費用を差し引くと手元に残る額はわずかになります。ここに数ヶ月から1年以上の時間と精神的負担が加わることを考えると、割に合わないという結論もあり得ます。
逆に、200万円、300万円という規模が見込めるのであれば、費用をかけても十分な効果が残ります。
弁護士費用の詳細は慰謝料請求の弁護士費用をご参照ください。
それでも請求を検討すべきケース
反対に、次のような場合は請求する意味が大きくなります。
証拠が揃っている。相手が否認しにくい状況であれば、交渉は早くまとまります。
相手に支払能力がある。安定した収入や資産があれば、回収の見込みが立ちます。
婚姻期間が長く、子どもがいる。金額が高く評価されやすい事情です。
離婚に伴い経済的な備えが必要。生活の再建資金として現実的な意味を持ちます。
相手が反省を示さない。関係を続けている、開き直っているという場合、法的な手続きによって区切りをつけることに意味があります。
納得しないままでは前に進めない。金額の大小とは別に、事実を確定させ責任を明確にすることが、心理的な整理につながる場合があります。この価値は数字では測れません。
請求しない場合に取り得る手段
慰謝料を請求しないと決めた場合でも、できることはあります。
離婚条件全体で調整する。慰謝料という名目にこだわらず、財産分与を多めに受け取る、住居を確保する、養育費の額を確実にするといった形で実質的な利益を確保する方法です。調停では解決金という名目で取り決めることもあります。
接触禁止の取り決めをする。金銭を求めない代わりに、不貞相手に対して今後一切接触しないことを約束させる合意を交わす方法です。関係の再発を防ぐという目的においては、金銭より実効性があることもあります。
事実確認だけを行う。請求はしないが、何が起きていたのかを確認して自分の中で区切りをつけるという選択です。修復か離婚かの判断材料としても機能します。
時効を意識しつつ判断を保留する。いま決めなくてもよい場合があります。ただし3年という制限があるため、期限は把握しておく必要があります。証拠だけ先に確保しておくという進め方には合理性があります。
判断の前に確認しておきたいこと
請求するかしないかを決める前に、次の点を確認しておくと判断の精度が上がります。
相手に支払能力があるのか。証拠がどこまで揃っているのか。時効までどのくらい残っているのか。自分が最も優先したいのは金銭か、離婚か、修復か、区切りか。そして、手続きに耐えられる心身の状態にあるか。
これらを整理せずに「請求できるのだから請求する」と動き出すと、途中で方針が揺らぎ、結果的に消耗することがあります。逆に「面倒だからやめる」と早々に諦めると、後から後悔することもあります。
どちらの結論であっても、判断材料を踏まえて自分で選んだという実感があることが、その後の納得につながります。
ケース別に考える判断の目安
実際のご相談に近い形で、状況ごとの考え方を整理します。
相手が無職・低収入で、証拠もない
回収の見込みが乏しく、立証も難しい組み合わせです。この場合、慰謝料そのものを追うより、離婚条件全体の中で実質的な利益を確保する方向に切り替えるほうが現実的なことがあります。財産分与や養育費の取り決めを確実にすることに労力を向ける、という判断です。
相手に収入はあるが、証拠がまだない
関係が現在も続いているのであれば、調査によって材料を得る余地があります。回収の見込みが立つ相手であれば、証拠を確保してから請求に進む価値は高くなります。判断を急ぐより、まず事実確認に動く場面です。
証拠はあるが、早く離婚したい
慰謝料の交渉を持ち込むと期間は延びます。ただし証拠がある状態は交渉上有利なので、金額にこだわらず解決金という形で一定額を取り決め、短期でまとめるという進め方もあります。ゼロか満額かではなく、中間の落としどころを探る発想です。
関係を修復したい
配偶者への請求は実質的な意味が薄くなります。不貞相手に対して、金銭より接触禁止の合意を重視するという選択が機能することがあります。再発防止という目的に照らせば、こちらのほうが実効性が高い場合もあります。
時効が迫っている
残り期間が少ない場合、迷っている時間が選択肢を狭めます。内容証明による催告で6ヶ月の猶予を確保しておき、その間に判断するという方法もあります。まず期限を止める動きを取っておくことで、考える時間を作れます。
心身の状態が悪い
この場合、無理に進めないことを優先してよいと考えます。ただし証拠は時間とともに失われるため、確保だけ済ませておき、請求の判断は先送りにするという分け方が現実的です。
請求しないと決めた後の心の整理
請求を見送るという判断をした後、「相手に何の責任も取らせなかった」という感覚が残ることがあります。これは自然な反応です。
ただ、請求しないことと、責任がなかったことは別です。事実を把握したうえで、費用や負担を踏まえて自分で選んだのであれば、それは消極的な諦めではなく積極的な判断です。この区別は、後の納得に影響します。
逆に、事実がわからないまま「たぶん浮気だったのだろう」と曖昧に終わらせると、区切りがつきにくくなります。何年経っても疑いが消えないというご相談は実際にあります。
そのため、請求するかどうかとは別に、事実確認だけは行っておくという選択には意味があります。確認した結果として不貞がなかったと判明する場合もあります。どちらの結果であっても、わからない状態が続くよりは前に進みやすくなります。
周囲に相談する際の注意
判断に迷う段階では、家族や友人に相談したくなるものです。支えになる一方で、注意したい点もあります。
ひとつは、情報が広がるリスクです。善意で他の人に伝わり、結果として配偶者本人に届いてしまうことがあります。警戒されれば証拠の確保は難しくなります。
もうひとつは、助言が状況に合わないことがある点です。「絶対に取れるだけ取ったほうがいい」「早く別れたほうがいい」といった強い意見は、その人の価値観に基づくものです。相手の資力や証拠の状況といった個別事情を踏まえたものではありません。
感情面の支えは身近な人に求め、判断材料は専門家から得るという役割分担が、結果的に負担を軽くします。
請求する側にも起こり得る不利益
請求を進める過程で、思わぬ形で自分が不利な立場に立つことがあります。判断材料として知っておいてください。
行き過ぎた行為による責任。不貞相手の勤務先に連絡する、家族に暴露する、SNSで氏名を公表するといった行為は、名誉毀損などの問題を生じさせるおそれがあります。正当な請求であっても、方法を誤れば立場が逆転しかねません。
証拠収集の方法による問題。相手のスマートフォンを無断で操作する、承諾なくGPS機器を取り付ける、他人のアカウントにログインするといった行為は、それ自体が問題視されることがあります。集めた材料が使いにくくなるだけでなく、責任を問われる可能性もあります。
こちら側の事情を持ち出される。婚姻関係の悪化について自分にも落ち度がある場合、それを主張されて争点が広がることがあります。生活費を渡していなかった、暴言があったといった事情が持ち出されるケースです。
職場や周囲に知られる。訴訟に至れば手続きの記録が残ります。関係者への聞き取りが行われることもあります。秘密を保ったまま進めたい場合、この点は考慮が必要です。
こうしたリスクを避けるには、感情のまま動かず、手続きとして淡々と進めることが重要です。判断に迷う場面では専門家の意見を先に聞いてください。
まず事実を確認するという選択
請求するかどうかを決めきれない段階では、まず事実を確認するという選択があります。何が起きていたのかがわからないままでは、請求も修復も判断できません。
また、証拠は時間とともに失われます。関係が終われば新たな材料は得られません。判断を保留する場合でも、確認だけは早めに行っておくという進め方には合理性があります。
A&Y探偵事務所(探偵業届出 第45230061号)は全国対応で、行動調査による事実確認と報告書の作成を行っています。料金は次のとおりです。
| 項目 | 料金(税込) |
|---|---|
| 基本調査料金 | 49,500円〜(最低稼働3時間分) |
| 通常料金(10時間) | 165,000円 |
| 車両代 | 5,500円 |
| その他経費 | 電車代・ガソリン代等の実費 |
長時間の調査には、割安なパック料金をご用意しています。
| プラン | 料金(税込) | 1時間あたり | 割引 |
|---|---|---|---|
| 10時間パック | 148,000円 | 14,800円 | 約10%オフ |
| 20時間パック | 280,000円 | 14,000円 | 約15%オフ |
| 30時間パック | 396,000円 | 13,200円 | 約20%オフ |
※報告書・証拠写真/動画の提供は料金に含まれます。ご依頼者様の同意なく追加費用が発生することはありません。延長は30分単位で対応可能です。
請求するかどうかを決めていない段階でのご相談も歓迎します。ご相談・お見積もりは無料です。
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浮気や不倫の問題は、証拠集め・調査の依頼・慰謝料や離婚の手続きが連続してつながっていくことがほとんどです。この記事のテーマだけで判断せず、前後の段階についても目を通しておくと、次に取るべき行動を選びやすくなります。なお、法律上の個別具体的な判断については弁護士へのご相談をおすすめします。
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請求の全体像は不倫の慰謝料請求、認められる条件は慰謝料請求の条件、離婚との関係は離婚と慰謝料請求、証拠については浮気の証拠をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
慰謝料を請求しないと損をしますか?
必ずしもそうとは言えません。相手に支払能力がない場合や証拠が乏しい場合は、費用と労力をかけても回収できないことがあります。費用対効果と精神的な負担を含めて判断することをおすすめします。
請求しない代わりにできることはありますか?
財産分与を多めに受け取る、解決金という名目で取り決める、不貞相手に接触禁止を約束させるといった方法があります。金銭以外の実効性を重視する選択もあり得ます。
今は請求しないで後から請求できますか?
不貞の事実と相手を知った時から3年という制限があります。また離婚時の書面に清算条項が入っていると難しくなります。判断を保留する場合でも期限は把握しておいてください。
相手にお金がないかどうかはどう調べますか?
勤務先や生活状況からある程度の推測はできますが、資産の詳細を個人で把握することは容易ではありません。弁護士に相談する際、把握している範囲の情報を伝えて見通しを確認するのが現実的です。
精神的につらくて手続きを進められません。
無理に進める必要はありません。時効を把握したうえで、体調が落ち着いてから判断するという選択もあります。証拠だけ先に確保しておけば、後の判断の幅は広がります。
次に読むと理解が深まる記事
- 不倫・浮気の慰謝料相場と金額を左右する要素
- 慰謝料請求の条件・相場・流れ
- 慰謝料請求されたときの対応と減額のポイント
- 慰謝料請求を弁護士に依頼したときの費用相場
- 離婚時の慰謝料請求で認められるケースと相場
参考にした法令・公的情報
- 民法(明治29年法律第89号)|e-Gov法令検索(不法行為による損害賠償は第709条・第710条、消滅時効は第724条)
- 夫婦(離婚等)|裁判所
- 探偵業の業務の適正化に関する法律(平成18年法律第60号)|e-Gov法令検索
まとめ
慰謝料請求は権利ですが、常に行使すべきものとは限りません。相手に支払能力がない、証拠が乏しい、時効が完成している、早期の解決を優先したい、精神的な負担が大きいといった場合には、見送るほうが合理的なこともあります。
一方、証拠が揃っていて相手に資力があり、婚姻期間が長いといった事情があれば、請求する意味は大きくなります。
いずれの結論でも、費用と回収見込み、時効までの期間、自分が最も優先したいことを整理してから決めることが大切です。判断がつかない段階では、まず事実を確認することから始めてください。

